もう35年前の本だが、「モーツアルト・ノンフィクション」という本が出た。
そこで、モーツアルトは梅毒に侵されていたと、著者の田中重弘氏は力説している。
西洋の楽聖たちの死因にはあるあるだが、モーツアルトまでとは思わなかった。
これまでの通説と、田中氏による主張を比べてみる。
通説⇒モーツアルトは、彼の才能をねたんでいた宮廷楽長のサリエリによって毒殺された。映画『アマデウス』は、内容をスキャンダラスに作るため、サリエリのよる暗殺説を使った。
田中説⇒サリエリは、モーツアルトを宮廷作曲家に推薦したり、彼の子どもたちに特別な音楽教育の機会を設けたりして、むしろモーツアルトに協力的な人間だった。
通説⇒モーツアルトの死は、ウィーンの公式記録によると粟粒熱によるもの。粟粒熱は、今の医学用語にはない。おそらく、連鎖球菌が体の中で暴れたか?
田中説⇒モーツアルトは、梅毒で死んだ。父のレオポルドが既に梅毒に侵されていた。だから、モーツアルトは先天性の梅毒患者である。産まれてから、父親が注意深く病気を見守り闘病させた。35歳まで生きたのは、そのお陰である。
ちなみに、姉のナンネルも母親も梅毒患者だった。
通説⇒彼の葬儀は大変粗末なもので、墓どころか遺体の行方さえ分からなくなった。これは、悪妻とされた妻コンスタンツェのせいである。
田中説⇒モーツアルトは既に梅毒の末期症状であったために容貌も醜いものとなり、堂々とした葬儀を開けなかった。当局の方針で、梅毒による死亡者は麻袋に入れられ、大量の石灰をかけて地面を掘った穴に埋葬された。モーツアルトの遺骸も、同じように扱われた。
妻は、彼が危険な2度目の腸チフス菌による梅毒の荒療治をしたことに怒っていた。そのことも、粗末な葬儀につながった。
田中氏の本には、モーツアルト一家の逐一の収入、日々の日記、更には当時の社会の政治・経済状況まで、驚くほど詳細に記述されている。
もちろん直接的な証拠は残っていないが、彼が梅毒患者であったことを裏付ける状況証拠はたくさんあることが分かった。
これまでのモーツアルト像は、天才中の天才で、天使のように無邪気な人というようなイメージだった。今の音楽業界や音楽評論家たちは、モーツアルトを美しく神格化することに終始し、売り上げや儲けにつなげていた。
が、実際のモーツアルトは、病苦と闘いながら勤勉に音楽と向き合った人物である。
今では梅毒は、ペニシリンなどの薬で簡単に治る。肺炎もそうだな。
日本でも、明治・大正・戦前までは、前途ある若い有為な人材が次々と亡くなった。
モーツアルト一家も、ペニシリンを打つことができたら、どんなに幸せだったろう。
しかし、医療が進んで長生きできるようになった現代に彼が産まれてきたら、どんな音楽家になったか?
真善美の美徳が軽んじられ、大金や大資産を持つ者だけが尊敬され、みな一日中携帯を眺めているような現代社会に産まれていたら…?
案外、凡人で終わっていたかもしれないね。その辺を歩いているような・・・



















